人材投資税制
平成17年税制改革ではたった3年間の措置ではありますが、教育訓練に積極的にお金をかけた場合は、一定の税額控除を認め、税制面でもその促進を図ることになりました。
「中小企業も人材への教育訓練投資が不可欠」……税制が後押し
バブルの頃は教育訓練などの人材投資より不動産や株など、利ざや稼ぎに夢中な時代でした。バブルが崩壊して我に返ると、人材への投資割合は給与総額に対してみると、欧米各国の約半分、お隣中国の5分の1程度になっていました。
さらに、「2007年問題」といわれる団塊世代の定年者が一気に正社員でなくなり、少子化の上に、ニート、フリーターなど若者が企業にとっての人材、(人財)になりにくい時代に入っています。
中長期的な教育訓練の実施を積極的に推進しなければ、企業内人材の知識、技術、能力は一、二回の研修をしたくらいでは身に付きません。
特にいわゆる中小企業は、なかなか始めから優秀な技術や考え方を持った人は集まりにくいのが現状です。
中小企業こそ積極的、継続的な教育訓練への投資が必要なのです。
そこで、平成17年税制改正ではたった3年間の措置ではありますが、教育訓練に積極的にお金をかけた場合は、一定の税額控除を認め、税制面でもその促進を図ることとしました。
教育訓練費が増加した場合の特別税額控除制度を創設
【基本制度】
青色申告書を提出する法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額が、そ の法人の直前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された教育訓練費の平均額を超える場合には 、 3年間の時限措置 として、 その超える部分 の金額の100分の25相当額の特別税額控除を認める。ただし、当期の法人税額の100分の10相当額を限度とする。
【中小企業の場合の特例】
青色申告書を提出する中小企業者等については、上記の制度の適用に代えて、
各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額に対し 、
↓
( 2年間の平均を超える部分ではなく、損金算入の全額が対象 )
次の特別税額控除割合による特別税額控除を選択適用することを認める。
ただし、当期の法人税額の100分の10相当額を限度とする。
イ 教育訓練費増加割合 (当期の教育訓練費の額からその直前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された教育訓練費の平均額を控除した金額のその平均額に対する割合)が、
(特別控除率)
40%以上の場合 → 20%
40%未満の場合 → 教育訓練費増加割合に0.5を乗じた割合
(注) 上記の改正は、
※法人は平成17年4月1日以後に開始する事業年度について適用。
※個人は平成18年分から3年間
※3年間の時限立法
※法 人住民税にも3年間の時限措置 で、中小企業者等に対する人材投資(教育訓
練)促進制度が創設される。
(中小企業への優遇)
※基本制度では、税額控除の算出に関しては、教育訓練費の 増加額に対して
税額控除率(100分の25)を乗ずるが、
中小企業者等の特例では 、教育訓練費の 全額に対して税額控除率を乗ずる こととしているので、 増加額ではなく、総額が対象となる。
税法の表現は相変わらず理解しにくい書き方が多いものですが、下記の計算例を見ると特に面倒なことではありません。
【計算例】
中小企業が、
① 2期前に400万円、前期に600万円の教育訓練費を使った場合
今期は1000万円を使ったとすると、
過去2年間の平均教育訓練費は、(400万+600万)÷2=500万円
増加率は、(1000万円ー500万円)÷1000万円=50%
これは、40%以上なので、税額控除率は50%が適用され、
税額控除は、1000万円×20%= 200万円 となる。
(ただし、法人税額の10%までが限度)
※この金額は、法人住民税の課税標準から控除できるので、
200万円×17.5%(法人住民税率)=350,000円で、 合計2,350,000円
② 2期前に400万円、前期に600万円、今期は800万円の場合。
増加率は、(800万円-500万円)÷800万円=37.5%
40%未満なので、税額控除率は、増加割合37.5%×0.5=0.1875
税額控除は、800万円×0.1875= 150万円 となる
(ただし、法人税額の10%までが限度)
※この金額は、法人住民税の課税標準から控除できるので、
150万円×17.5%(法人住民税率)=262,500円で、 合計1,762,500円
↓
2期平均より少しでも多ければ、いくらかは控除できる仕組み
結構使える制度を珍しく創ってくれたものですが、「教育訓練費」の内容については、相変わらず結構な限定をしていますから注意が必要です。
【対象となる費用の留意点】
この制度の教育訓練を受ける対象者は 、法人・個人の使用人(派遣社員を含む)で、法人の役員(使用人兼務役員も役員だからダメ)、個人事業主は含まない。但し、執行役員で取締役でない者は役員ではないので含まれる。
1.(講師・人件費等)
【対象となるもの】
① 外部講師・指導員を招き「講義・実習等を行う」場合の謝金等
② 外部専門家・技術者に対し、契約により、継続的に講義・指導等の実習を依頼する場合の謝金
③ 企業・事業所の自己の業務遂行上に必要な専門知識の伝授、技術、技能の現場指導
④ 講師・指導員に対して支払う謝金のほか、会場への旅費・交通費・宿泊費等 (受講者にかかる部分はダメ)
⑤ 個人講師・指導員に直接支払うもののみならず、法人・団体からの派遣講師等で法人・団体等に支払う謝金等
【対象とならないもの】
① 自社の社員が講師等として講義・指導をして手当等を支給しても内部費用なのでダメ。
2.(教材費等)
【対象となるもの】
① 教育訓練をするために購入又は委託作成したテキストその他の教材(ソフト含む)で、減価償却資産に計上せず、一括損金算入したもの。
② 専ら教育訓練実施に使用するテキストその他の教材(ソフト含む)
③ 技術・技能等の教育訓練実施に使用する実習用の教材その他のもので
もっぱら教育訓練の用に供するもの。
【対象とならないもの】
① 教育訓練以外の業務用等に使用するテキストその他の教材
……つまり仕事に使うものは含まれない
3.(研修参加費)
(参加費が対象となる訓練機関等)
① 民間教育委託会社・公共職業訓練機関・商工会議所等・大学・専修学校等の社外教育機関等
② 法人・事業所の業務遂行上必要なその使用人の教育訓練参加費用としてその法人等が支払う費用
③ 社外教育機関に支払う「入会金、入学金、学費、講座受講料、教材費等」
④ 教育訓練の一環として受験する資格や免許の取得のための受講料
⑤ 国外留学の場合も上記①~④と同じ
【対象とならない費用】
① 教育訓練の直接の費用ではなく、 社外教育機関等に支払われない 「旅費、保険料、居住費等」
この制度のためにも 経理の仕事は重要です。
① 今までの『研修費』としての科目の内容を再確認する必要がある。
② 直前2期の『教育訓練費』に該当する金額を計算整理しておくこと。
③ 適用事業年度以降の『研修費』該当の内容と『教育訓練費』とを一致させておいた方が、申告処理がスムーズとなる。
↓
申告書に各種計算明細書を添付することが適用の条件だから
「教育訓練費」の科目を明示しておいた方がベター。
(参考)
人材投資促進税制のパンフレット及びQ&A集について
経済産業政策局産業人材参事官室





