「経営理念」について

本来、経済性と人間性は異質なものです。

人は往々にして非効率な生き方を求め、同時に人間性の実現(生きがいとか、働きがい)を求めます。

また、どうせならブランド品が欲しいとか、人並み以上のある程度の贅沢はしたいとか、等の欲求を持っています。
例えば、所詮は休みの日にしか使わないマイカーを持ったり、しかも時速200Kmも出せる車への買い換え、などを結構日常的に行います。

つまり、効率の良し悪しは別にして、人は車を買い換える行動をとります。
人間は決して効率優先で生きていないのです。

また、人は、より多くの収入を得たい、という欲求と同時に、相手から認められたい、自己実現を果たしたい、自己の時間を多く持ちたい、など極めて当り前の欲求を持っています。
一方、経営は、経済性最優先で効率化、高収益化を求めて人を選抜し、高能率を求め、最大効果を上げるため、それを得られるだけの労働提供を求めます。
さらには、経費の節約、人件費の圧縮など、利益の最大化を目標として掲げます。
つまり経営は効率最優先の世界です。

このように、経営と人間性は本来相容れない、そもそもの価値観の相違を抱えているものです。

しかしながら、人が行う経営において、効率主義のみを優先させる仕事は成り立ちません。
人間性の欠如が生まれるからです。

「経営理念」は、この両者を繋ぐ共通の基本認識として、また、両者の目的と欲求を同次元で、社員の判断基準、経営の最高目標として掲げるものです。

何故、貴方はここにいて、この仕事をしているのか?と、聞かれて、「経営理念が好きだから」、とこたえられるもの。

…それが理念であり、理想の理と、信念の念です。

「経営理念の解説」

一、選ばれる、ということ。

良い商品だから売れるはず!

…これは売る側の評価であり、実際に売れないのは、商品が悪いか、必要でないから、でしかありません。
今は本当に欲しいものを客が自ら買いに行く時代です。

選ばれる会計事務所の商品とは、を我々が知り、工夫して開発しなければ選ばれませんし(MD)、選ばれるための戦術を持たなければなりません。(MK)
※商品=マーチャンダイジングMD※顧問先=マーケティングMK戦術とは、顧問先から見た競争力ある入り口であり、更に戦術は戦略に従います。

戦術は釘、戦略は釘を打ち込む金槌です。

戦略は独自性を持ち、コアコンピタンス(独自固有の長所)がなければならず、それがなければ最早、低価格路線しかありません。

戦略とは、をこう表現した経営者がいます。
「ライバル企業からではなく、自分の会社から買って貰う理由を伝えること」
ジャック・トラウト

二、信頼される、ということ。

「正直」と「情熱」、「専門性」、「遵法性(コンプライアンス)」がキーワードとなります。

他と比較して、顧問先が信頼という評価をするのであり、「信頼されている」、という自己評価ではありません。

それは却って自己満足、井の中の蛙の危険性を伴います。

  • 「正直」とは、単なる愚直であってはなりません。
  • 「情熱」とは、独り相撲であってはなりません。
    「専門性」とは、独りよがりであってはなりません。
  • 「遵法性」とは、部分的なご都合主義であってはなりません。
  • 「信頼」の裏側には常にリスクが潜在化しているを忘れてはなりません。

多くの企業や自治体がこの「信頼」を勝手に自己評価し、真のリスク管理、安全管理を怠った結果、どうなったかは枚挙に暇がありません。

”申し訳ありません”という言葉を使わずに済むこと。
信頼される出発点です。

三、自己実現、ということ。

非常に抽象的で、個々人それぞれの捉え方がありますが、自分自身を良く知るところから始まります。

次のようなことは共通しています。

1.短所と長所は同源であり、短所をあげつらうより先に長所を伸ばすことです。

ただし、長所の過剰表現はまた短所になることを知ることが不可欠です。

例えば優しいという長所は過剰になると、気の弱さ、優柔不断となり、明るさという長所は過剰になると、緊張感の欠如を生み、真面目という長所が過剰になると、臨機応変、決断力、挑戦力の欠如を生むことになります。

2.自分で自分の面倒を見ることの始まりは、「実は自分が自分の面倒をみていない」ことに気づき、自分なりに責任をとることです。
3.単なる問題解決や、リスク回避よりは先ず、何よりも自分自身の「成長の機会」を創出し、加速させることです。

勿論、バランス感覚を持つことが必要ですが、バランスとは必ずしも50:50の比率だけではありません。
自らに制約を課さず、適切な解決策を選択し、実行出来るバランス感覚です。

4.全員一致に対する幻想(これこそ最高の状態だ!という)を持たないことです。
5.自在今生・・・・自分は今何のために生きてここに在るのか、人生への投資の真っ最中であることの認識を持つことです。

◎特にリーダーシップを要求される社員へ

  • 1.リーダーは状況の中で創られるもので、生まれてくるものではない。
  • 2.リーダーが自分をしばりすぎ内向思考になると組織全体が同傾向に陥る。
  • 3.リーダーは全てに関心を持っていて当たり前であり、行動こそが証明する。
  • 4.リーダーのコントロールと部下の自由な行動領域は反比例するものである。

【成功したリーダーは、常に自分の記録に挑戦しそれを破ってきた人間であり、仕事を任せる名人である。】

四、行動の自覚、について。

顧問先は個人である貴方に仕事を依頼しているのではありません。

内部責任は兎も角、外部責任は全て代表社員の無限責任の範囲であることを自覚して下さい。
このことは責任の明確な線引きにより、社員自身を守ることになります。

「自分自身の行動」はすなわち、組織としての法人の行動であり、しかも「選ばれ」、「信頼され」、「自己実現した個人」として、十分な法的、社会規範的な対抗力を持ったものであることが要求されます。

当然、行動には能力が必要です。

読書で得た知識は記憶であって、知恵ではなく、単なる記憶は行動を生みません。

記憶、知識に経験が伴って知恵が生まれ、知恵と行動が合一して、真の能力が生まれます。

不断の「自己実現」欲求との関連性が最も必要とされます。

五、思いやり、本音、ということ。

「思いやり」は特に人間性の最高レベルの良質な特性であり、互いの人間関係の中で絶対に必要不可欠です。
是非とも職場がこの「思いやり」で包まれていて欲しいものです。

しかしながら、勘違いの思いやりは、”皆と仲良く”という幼稚園の道徳観に近づく恐れもあり、ビジネスでは危険思考とさえ言える場合があります。

等距離外交は所詮理想論です。
それでも、互いに不安感、警戒心、恐怖心などを持たず、真実と信頼の関係をもとに「思いやり」が実践される職場を築くことを目指します。

「本音」は、ある場面では闘争を生む可能性があるものです。

職場はビジネスの場、組織です。
そもそも組織の原点は、闘争集団である軍隊とも言われています。
決して家族等のコミュニティの場ではありません。
一方、「本音」を言わないのが大人、という妙な価値観もありますが、その結果どんな社会を形成するでしょうか?

「集団思考」優先や、「我関せず」で、「本音」を出さないことを、皆が言わないから、とか、皆がやってるから、という自分に都合の良い合理化をしてしまうことになります。

つまりは「自己実現」と全く正反対の自分、を正当化しようとすることになってしまいます。

「本音」で話し合える、とは勝手な言いたい放題ではなく、正直に、相手に真意が伝わるように自分自身を表現することですから、節度を持ちつつ、積極的に皆でその雰囲気、環境、機会を持つ相互働きかけが必要です。